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歴史を振り返る好機

◎2014年は歴史を振り返る好機、世界を動かした三つのこと

グローバル化が曲がり角を迎えはじめた

2014年の夏は、世界を揺り動かした大きな歴史の節目を振り返る好機だ。1914年に始まった第一次世界大戦から100年、第2次世界大戦のナチスドイツの敗北のきっかけを作った連合軍のノルマンディー上陸作戦から70年、そしてソビエト帝国の崩壊と冷戦終結、天安門事件から25年という節目の年だ。そして来年は戦後70年を迎える。

今年6月、筆者は世界新聞大会に参加するため、イタリアのトリノに出張したが、経由したパリのシャルルドゴール空港の本屋で時間つぶしをした際、フランスのメディアがDデー(ノルマンディ上陸作戦開始の日)を記念するさまざま特集にエネルギーを割いていることに驚かされた。ルモンドもL‘Expressも、また大衆紙までが、Dデーの特集を組み、70年前に、どのように各連合軍部隊がノルマンディーの海岸に上陸、展開し、ナチスドイツへの反撃に転じたもようを詳細な地図やイラスト、写真を駆使して報道していた。この記念式典にはオバマ米大統領、プーチン・ロシア大統領、そしてドイツのメルケル首相も参列した。

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欧州を引き裂いた、列強同士の勢力争いが第1次世界大戦を引き起こし、のちにロシア革命と共産主義革命の引き金となり、ナチスドイツの台頭でおきた第2次世界大戦は欧州を疲弊させ、ユダヤ人虐殺のホロコーストの悲劇を生んだ。Dデーは欧州の全体主義国との戦いに連合軍が勝利するきっかけとなり、自由で民主的な西欧が米国の庇護のもとで築かれることになった。

第2次世界大戦後の世界秩序再編は共産圏対西側資本主義圏との東西分断、東西冷戦を生み出した。そして1989年の冷戦終結、やがてソ連崩壊へと歴史の歯車は動いた。その間、アジアでは中国の「改革開放路線」が鄧小平によって1978年から動き出し、1989年に天安門事件が起きた。中国は国内の民主化運動を押さえつけ、下からの政治改革を拒否、トップダンンの共産党主導の政治路線を確立、経済改革を推進、今日の中国の経済大国化の道を開いた。

過去25年を振り返ると、世界にとって最も重要な変化はグローバル化と言わざるを得ない。市場経済が世界中で受け入れられ、インターネットで国境を超えた情報が駆け巡り、デジタル革命,IT革命で人、モノ、カネが動き、各国や各地域経済が単独では生きていかない、より統合された経済が作り出されている。

しかし、こうした市場経済の構造改革やグローバル化の一方で、リーマンショック後の世界経済金融危機、日本の低迷した20年とよばれるデフレ経済、新興国家群(BRICKS)が求める世界経済のパイの再配分、ロシアのクリミア併合などウクライナをめぐる失地回復を目指す動き、中国の経済的大国化と軍事力の拡大による“中華帝国”の復活をめざす自己主張の顕在化–など、民族主義的、国家的な利害によって世界の分断が懸念されるナショナリズムの新たな動きもある。

尖閣諸島や南沙諸島をめぐる中国の海洋権益確保を全面にだした戦略が東アジアで問題を引き起こしている。日本、中国、韓国をめぐる安全保障上の利害の対立は、地域紛争の危険性を増している。米オバマ政権のアジア政策が大きな試練に直面している中で、安倍内閣が進める集団的自衛権と憲法解釈変更の問題は日米関係に複雑な反応を引き起こしてもいる。

このようなグローバル化の進展の陰で世界秩序がきしみ始めて大きな曲がり角に立っているような気がしてならない。戦後70年を迎える前に、この夏はもういちど過去100年の世界を揺り動かした問題に日本人としてあらためて思いをはせ、歴史を俯瞰的に見つめ直す好機だと思う。

(山口 光)