国立天文台水沢キャンパスで最新鋭スパコン稼働
水高にほど近い国立天文台水沢キャンパス(旧緯度観測所)でこのほど、天文学に特化したスーパーコンピューターとしては世界最速の「アテルイ2」の運用が始まり、6月1日、同施設で記者発表が行われました。シミュレーションで描き出す映像の解像度が向上することで銀河の進化や星の起源の解明につながることが期待されているということです。
早速、取材した共同通信盛岡支局の佐々木夢野記者に話を伺ってみました。佐々木さんによると、記者発表した国立天文台の小久保英一郎教授はアテルイ2の導入により「太陽の起源や動きを詳細にシミュレーションできるほか、銀河系の誕生と進化を3次元で再現できる。現実の宇宙の姿に近づけるのではないか」と期待を寄せていたそうです。
アテルイ2は頭脳となる演算処理装置を約4万個使用することで、1秒間に約3千兆回の計算が可能で、先行実施された双子星の形成過程のシミュレーションでは、望遠鏡での観測と同様に星に向かってガスが落下する様子を描き出したといいます。
現代の天文学は宇宙を望遠鏡で直接見る「観測天文学」と物理学と数学によって現状を記述して理解する「理論天文学」を両輪として発展してきたそうです。しかし、コンピューターが発達した今日、理論だけでは解くことができない方程式を数値的に解き、シミュレーションによってコンピューターの中に宇宙や天体を実験的に作り出し観察する「シミュレーション天文学」が宇宙を理解するために欠かすことのできない第三の手法となっているとのこと。
佐々木さんによると、国立天文台天文シミュレーションプロジェクト長の小久保教授は「現代天文学におけるシミュレーションの役割はますます大きくなってきている。観測される天体がなぜそのように見えるのか、また観測できない宇宙や天体では何が起きているのか、など物理に基づいたシミュレーションによって描き出すことができる。新しい〝理論天文学の望遠鏡〟として超新星の爆発の機構や、銀河の形成と進化、恒星と惑星系の起源などの問題を解き明かしてくれることを期待している」とアテルイ2導入の狙いを語っていたということです。
小学生時代は小遣いをためて天体望遠鏡を買い、天体観測に熱中。作文では〝将来の夢〟として「天文学者」と書き、水高理数科に進んだ筆者ですが、2年時の数ⅡB「数列」をきっかけに数学、さらに物理や化学など理科系科目でことごとく挫折し、〝理数科内私文〟に日和りました。ですが、今回のニュースで次の帰省時には国立天文台水沢キャンパスを訪れ、再び宇宙のロマンに思いをはせてみようかと思いました。
今回、この原稿を書くに当たって協力してくださった佐々木さんは日本海に面した島根県江津市の出身でことし3月に宇都宮大学国際学部を卒業、4月に共同通信に入社したばかりの新人記者。盛岡支局に勤務し、四国とほぼ同じ面積の岩手県を取材で東奔西走しています。今回、奥州市を訪れ自身の故郷を思わせるのどかさに「懐かしさ」を感じたそうです。「岩手県は広いからこそ、たくさんの魅力がつまっていて、発見するのが楽しい」と話す佐々木さんには、今後も岩手の魅力を全国に発信していただきたいと思います。(1980年卒・同窓会関東支部副会長 及川仁)